【お芋文庫】「杉の木のおはなし」

一本の杉の木が真っ直ぐに立っていた。
あまりにもいきおいよく空に向かってまっすぐに伸びているので、
いつの日か、その杉の木は
準備が整い次第、空に向かってピューン!と
飛んで行ってしまうんではないかと思えるような存在感だった。

準備って何の準備だろう。
わからないけれど。
きっと根っこの部分で準備しているのだろう。
土の中の栄養分。
もぐらさんのおしゃべり。
蟻さんのデザイナーズマンション風な巣。
いろいろなものを吸収しているのだ。

上と下にひっぱりあって、のびるのびる。
上にも行きたい。
下にも行きたい。
ジレンマ。

木こりのおじさんがちょん切ると
上の部分がビューン!と飛んで行ってしまう。
地面には切り株が残るけれど
実はその下の細い根っこたちは
ピューン!と土の中の奥深く
四方八方に飛び散っている。

根っこ花火。きれいだな。
夏の風物詩だな。

飛んでった杉の木の上の部分は
遠い星の地面にさかさまに刺さってるらしい。
勢いよく飛んできたは良いけれど
このあとどうしよう。って
悩むらしい。