【お芋文庫】「悪天候の国」

ある国のおはなし。

雨の日が何日も何日も続いていました。
絶え間なく降り続ける雨。
止みそうな気配が全くありません。
そもそも、“止みそうな気配”とは、どのようなものかわかりませんが
とにかく、そのような気配が一切なく
このまま雨が降り止むことは無いのではないだろうか・・・と
国民たちは半ばあきらめかけていました。

日照り乞いのようなものも行いました。
それでも駄目でした。
「止まない雨は無い」という言葉は
「止まない雨は無いとも言い切れない」という言葉に
置き換えられました。
みんながネガティブ思考です。

しかし。
ある日!
雨がぱったりと止み、小麦粉が降ってきました。
まるで空の上で雷様が
小麦粉の袋をくるっとひっくり返しているかのように
ドサッ。ドサッ。と小麦粉が降ってきます。
国民たちは戸惑いました。
町中が水浸しだったところに小麦粉が降ってきたのですから、
道路はぐちゃぐちゃになりました。
ぐちゃぐちゃというより、ネバネバです。
歩きにくいったらありゃしません。

そして次の日。
パラパラと小麦粉ではない白いものが降ってきました。
舐めてみると、塩辛いのです。
塩です。

さらに翌日。
今度はドライイーストが降ってきました。
やがて、町中がパン生地のようなものに覆われてしまいました。
国民が活動すればするほど、
パン生地のようなものは捏ねあげられ、
グルテンが増しました。

そして遂に!
晴れの日がやってきたのです。
「止まない雨はやっぱり無いよ
小麦粉とかも降ってくるけど
やっぱりいつかきっと晴れるんだ」
と、その国の大物ベテラン歌手が歌い、ヒットしました。

あたたかさのおかげで、
町中を覆っていたパン生地のようなものが
いよいよ発酵してふくらみ始めました。
ドライイーストも降って来ていたのですから、当然です。
ふっくらふっくら、ふくらんでいきました。

そこまではヨカッタのですが・・・
あたたかいを通りこし、熱い日が続きました。
熱い。熱すぎる。これは地獄だぞ。
毎日毎日カンカン照り。
ちょっとツライ。
皆、家に閉じこもって日照りをどうにかやり過ごしました。

やがてカンカン照りの日々は過ぎ去り、
国民たちはようやく外に出ました。
するとどうでしょう!
町中がこんがり焼けたパンでおおわれているではありませんか!!

「ひどい天候の日が続いたけれど、
パンがおいしく焼けたからいいや。」と
国民たちは大変美味しくパンを食べて過ごしましたとさ。