【お芋文庫】「トシオの悩み」

トシオは悩んでいた。
年の瀬が迫るにつれ、外出が億劫になるのだ。
なぜなら、世間の人々が
やたらとトシオの名前を連呼するからなのである。
しかもフルネームで。
この現象は、何年経っても慣れない。
いちにちに何度も、ドキッとする。

トシオは、ごくふつうのサラリーマンである。
ずば抜けた特技を持っていて一部の人の間で有名・・・なんてこともなく、
飛びぬけて素晴らしい容姿でもない。
それなのに、なぜ名前を連呼されるのか・・・

それは、トシオの苗字に問題があった。
「ヨイオ」という珍しい苗字なのである。
フルネームで、ヨイオ・トシオ。。。

年末になると必ず、人々は別れ際に
「良いお年を~」
「あ、もうそんな時期か~。良いお年を~」
なんて言って別れる。
その挨拶を聞くたびに、トシオはハッとさせられるのである。

また、年末が近づいてきた。。
出かけたくないな。。
そろそろ婿入りしようかな。。

悩むトシオ。