【お芋文庫】「座れない椅子」

職人「座れない椅子をこしらえました。どうぞおかけください。」

お客「え?座れないんだろう。どうやって腰掛けるんだ。」

職人「まぁそう言わずに、どうぞおかけください。」

お客「座れないじゃないか。それよりもコレ、美味しそうだのう。」

職人「いえ、これは食べ物ではありません。椅子です。」

お客「しかしねぇ、君これ座れないんだろう?
せっかくだ、美味しいうちに食べちまったほうがいい。」

職人「まぁ、確かに食べてみたら美味しいのかもしれませんが、
これは座れない椅子なんですよ。」

お客「君ぃ、これパンだろう?ニオイが、パンだもの。」

職人「パンのニオイのする、椅子です。」

お客「頑固だなぁ。椅子じゃないよこんなものは。座れないんだし。
ひとくちいただいてみるよ。・・・もぐもぐ。んん!んまい!!」

職人「あ!ちょっと!僕の椅子!!」

お客「これはパンだってば!!」

職人「椅子です!!」

お客「食べてみなさい!!ほれ!!」

職人「・・・うう!・・・もぐ・・・。あ。パンだ・・・・・・」

お客「だろう?」

職人「変だな。椅子の作り方見ながら作ったのに。」

お客「君これパンの作り方の本だよ。」

職人「あ!ほんとだ。まちがえちゃった。てへへ・・・」