【お芋文庫】「間に合わない男」

僕は、どこに行くにも
ものすごく早めに家を出なければならない。
なぜなら、
3歩歩けば人に道を聞かれるからである。
思うように前に進めないのだ。
道を説明する為に数歩下がることもある。
だから目的地に着くまでに、ものすごく時間がかかる。

数年前までは、道を聞かれるだけだったが、
最近は色んな事を聞かれる。
「今日の晩御飯のおかず、何にしたらいいと思います?」
「進路で悩んでるんです・・・就職と進学どっちがいいんでしょうか?」
「今日雨降ります?傘持ってったほうがいいですかね?」
「映画見に行くのと釣りに行くのどっちが楽しいですかねー?」
「引っ越したいんですけど、おすすめの町ってあります?」

「そんなん知るかーーー!うるせーーーーー!!!!」
と怒鳴って全員突き飛ばしたい気にもなるけれど、
僕はすごく人がいいので
ひとりひとりのニーズにこたえるべく
一緒に迷い、悩み、考え
親身になって受け答えをする。

というわけで、
いつも僕が目的地に着く頃には、
大抵のイベントごとは終わってしまっている。