【お芋文庫】「絵画展」

商店街のくじびきで
画用紙とパレットと筆のセットが当たった。
せっかくだから、絵を描いてみようと思った。
当たったのは画用紙とパレットと筆だけで、
絵の具は含まれていない。
これはきっと商店街の策略で
せっかく当たったんだから
商店街の文具屋で絵の具を買うだろう
っていう魂胆だろうが
僕はそんな策略には、はまらない。
家にあるもので描いてやる。
そう思って僕は冷蔵庫を開けた。
ケチャップ、マヨネーズ、カラシ、
イチゴジャム、ブルーベリージャム、ワサビ
醤油、オリーブオイル・・・
片っ端からパレットに乗せていく。
偏りはあるものの、
結構色んな色が取り揃った。
さらさらさらと絵を描く。
たくさん描けたので、
絵画展を開くことにした。
商店街の小道をチョイと入ったところにある
レンタルスペースを借りて個展を開いた。
クチコミで結構話題になったみたいで
思ったより沢山の人が見に来てくれた。
見に来た人は口々に「美味しそう」と言い
「綺麗」とか「美しい」みたいな
絵を褒める言葉は全然言ってくれなかった。
「これ売って下さい」とか言い出す人が居て
適当な値段をつけて売ったら
みんな「おいしいおいしい」と言いながら
僕が描いた絵を食べ始めた。
「あ、それ、ちょっと、僕の絵・・・」
と、食べるのをやめさせようとしたが
みんながあまりにおいしそうな顔をするので
僕もなんだか嬉しい気持ちになった。