【お芋文庫】「3色のリンゴの木」

なんにもない道を
ただひたすら
まっすぐ まっすぐ
歩いていました。

なんにもない。

まっすぐ まっすぐ。

なんにもない。

まっすぐ。

くりかえし。

やがて、なんにもない道に
何かがあったのです。

なんにもなくないじゃないか。
「なんにもない道」なんかじゃなかった。

なんにもなくなかった道に
何があったかと言うと
1本の信号機が
ぽつんと立っていたのでした。

黄色

ぱっと見は、信号機だったのです。
しかし、近くに寄って見上げてみると
信号機ではなくって、
赤・黄色・青のリンゴが
並んでいるのでした。

美味しそうなリンゴでしたので
するすると登って
そのリンゴを取ってみました。

赤いリンゴ。
真赤です。
おいしそう。
しゃくっ。
ひとくち食べてみました。
美味しい。

次に青りんご。
本当に真っ青なりんごです。
美味しそうではありません。
ぷるるん。
ひとくち齧ってみると、ぷるんとした食感でした。
これはこれで
結構美味しい。

最後に黄色いりんご。
これはちょっと酸っぱかった。

食べ終えた3色のりんごの
芯の部分が残りました。

この道が、また「なんにもない道」って
言われるのもかわいそうだ。
なんにもなくなんかない。
そうだ、種を撒こう。

種を撒きながら、
まっすぐまっすぐ歩きます。

やがてその通りには
信号機がニョキニョキと生えてきて
そしたら車や人がたくさん通るようになり
「なんにもない道」なんて言われてたのが
嘘みたいに活気づいた道になりました。