【お芋文庫】「キャンセル侍」

むかしむかし、あるところにひとりの侍が居ました。
人呼んで「キャンセル侍」
彼は、キャンセル待ちをするのが大好き。
キャンセルする人を待たなければならないような場所に現れ、
列の最後尾に並んだり、キャンセル待ちの用紙に名前を記入するのが趣味。

今日のタアゲットは、
村いちばんの人気者・おみっちゃんとゆく、茶摘みツアー。先着10名。
もちろん、徹夜組が出て、300名ほどの村人が並んだ。
しかし、ツアーに行けるのは先着の10名だけ。
あとの290人は、キャンセル待ちだ。

キャンセル侍は、23人目のところに居た。
今回の敵は、13人。。
彼は侍だが、人を切ったりすることはない。
そもそも、キャンセル待ちが趣味であるので、
待つのは苦にならないのだ。むしろ、楽しい。

今日も、自分の前に並ぶ13人の敵と
自分の命を狙っていそうな268人ぐらいのライバルに挟まれているという状況に
非常に満足していた。
キャンセル待ちって、楽しい。
なんか、わくわくする。

13人のキャンセルが出れば自分はツアーに参加できるし、
275人のキャンセルが出てやっと、ツアーに行ける人も居る。
なんだろう、この、不平等のようで、平等な措置。。

なんだか自分の後ろに並んでいる人たちが
かわいく見えてきたりする。
下級生、みたいな。
面倒見てやんなきゃ、みたいな。

キャンセル待ちをしている全員で
遊びに出かける計画なんかしたら楽しそうだな、なんて
ふと思ったりする。

今日なら290人のチームが結成される。
ものすんごおおおく楽しい計画を企てれば、
参加決定の10人は、羨むかもしれない。
そうしたら参加権をgetできてしまうかも。。
なんだろう、楽しい計画って・・・

おみっちゃんとゆく、茶摘みツアー見学ツアーというのはどうだろう。
参加決定が決まった10人を
キャンセル待ちしている290人が見学するんだ。
参加できないんだもの、眺めるぐらいいいじゃない。
へるもんじゃなし。

キャンセル侍の妄想はどんどん膨らむ。
明日は、何のキャンセル待ちしに行こうかな、なんて考えながら
とっくりと日は傾いていくのであった。。